【「1000年たどる家系図の物語 シャドウサイド」】序章 源静香(みなもとしずか)がやって来た②【家系図の漫画・小説】

 タマがお茶を持ってきた。左肩には眠ったままのチヨ(2歳娘)を乗せている。フミ(5歳娘)もちまちまついてくる。
「チヨちゃんおいで」
小さい背中から両手を脇に入れて膝に乗せる。

ちっちゃい子はなんで髪の分け目がないんだろう?ゆっくり振り向き目が開いた。ちっちゃい子はなんで黒目が多いんだろう?


「こんにちわ。いらっしゃいませ。子供いてうるさいけどすいません」タマが言う。

タマとは猫ではなく妻だ。妻の旧姓は玉置。安全地帯玉置浩二の遠~い親戚。
「5歳」フミがきいてないのに答える。いっぱいに開いた手がもみじ。お客様とタマが子供の年齢など、あいさつ代わりの軽い世間話。
 組み込み車庫をリフォームした応接室。壁2面には2台ずつ大きな本棚。地名辞典や苗字辞典が並ぶ。

 タマが僕の隣に座り再度チヨを受け取る。チヨは小さな子特有のなにも考えていないような何もかも知っているような目で、遠慮なく急なお客さんを眺めまわしている。フミはホワイトボードに落書きを始めた。
 お客さんの苗字は源(みなもと)さん。名前は静香さん。
 源静香…ってあれだよな。国民的アニメのヒロイン、お風呂大好きのしずちゃんの本名。確か漢字も同じ。
「良く言われるよ。それ」にっこり笑う「で、お申し込みなんだけど…」
 話進めるか。
「やっぱりですね、内容とかちょっとだけご説明させていただきますね」
お伝えしたいことはいっぱいあるのだが、ポイントだけ押さえて、長々と説明しないようには、気をつけている。なんで家系図作りたいか?なにかご先祖様の聞き伝えなどお持ちか?…で、今回の場合は、それよりもなによりもまず聞かなければならないことがある。女性の方に年齢を聞くときは気を使うが、今回は仕事上必要なことだ。さらりとスマートにいくか。


「え~と、ですね。あの~、失礼ですけど。ずいぶんお若い方だなとちょっとびっくりもしたんですが…ね。お電話いただいたときからちょっと…ああ、お若い方なんだなとか…。それでですね。まぁ、普段こんなこと聞かないのですが…つまりそのですね…。」


「19です」


 やっぱ未成年。すらっとしたジーンズ。ふわっとした薄いクリーム色のパーカー。学生さんかな?身長は僕(161㎝)よりちょい高そうだから163~165くらいか?

 別に未成年から業務を受けられなくはないのだが、親御様に了解取るのが筋だろう。この場合方法は2つ思いつく。

 1、親御さんからお申込みいただく。
 2、家系図の作り方を教えて自分でやってもらう。

 前者であれば問題ない。後者であれば、近所に住む未成年の女の子から指導料を取るのもなんなので利益にならない。…まぁ別にいいさ。後者でも。利益は後から付いてくる。…って自己啓発書とかにも書いてある。
「お父さんはこないだ死にました。お母さんは多分委任状?書いてくれると思う」
 お父様がお亡くなりになってる!?…こんな若い子が家系図に関心を持ったのもその辺なのかな?ご親族様の死をきっかけに家系図に関心を持つケースは多い。
「事故で…。半年…も、たってないか。今年1月」
「交通事故…ですか」
「お父さんは悪くなかったみたいなんだけど…。安全運転の人だし」

 今日は…時間は?暇ではないがちょっとくらいならあるか。
「そうでしたか…。お時間ありますか?もし良かったらですが、お教えするので、ご自分で家系図を作ってみてはどうですか?」
「自分で!? できるの?」
「はい。自分でもできます。と、いいますか。そもそも自分でできる範囲を私ら行政書士が代理で出来るだけのことなんですよ」
「時間は大丈夫だけど…あの、お金とか払います」
 まぁいいよ。せっかく来てくれたんだし。
「とりあえず良いですよ。お教えしますから。できそうなら自分でやってみましょう」
 チヨはタマに連れられて2階に行った。フミは1階に住んでる母ちゃんに預けるか。

 この日から数ヶ月。この女の子は母方家系を1000年を超え40代前までさかのぼり、父方家系の華麗で凄惨な歴史を知ることになる。

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